7月は、『これから戦場に向かいます』というノンフィクションの本をつくりました。4年前の2012年8月20日、シリアのアレッポで取材中に銃弾に倒れたジャーナリスト、山本美香さんの写真絵本です。7月26日ごろから書店に出ています。

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表紙と裏表紙はつながった写真。ヘリコプターに乗っている美香さんの写真です。

4月、突然藤代勇人さんという方からお手紙と企画書をいただきました。4年前に亡くなった山本美香さんの絵本をつくりたい、という内容でした。
藤代さんと、山本美香さんが所属していたジャパンプレスの佐藤和孝さんにお会いして、美香さんのお話を伺っているときです。佐藤さんは「根源は怒りだからね。『このやろう』っていう」とおっしゃいました。美香さんはどんな言葉で怒りを表現なさっていたのですか、とお聞きしたら「それは『ちくしょう』ですよ」と。
ジャーナリストの宿泊していたバグダッドのホテルが攻撃され、ロイターの記者が瀕死の重傷を負ったときに美香さんが発した「ちくしょう」という言葉。そこにはたくさんの怒りがこめられていました。
理不尽に無慈悲に人が殺されることへの怒り、ジャーナリストとしての怒り、それを心の奥底に秘めながら、こんなに静かに優しい写真を撮ることができる美香さんの強さに、私は心を大きく揺さぶられました。

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バグダッドの1シーン。この写真を初めて見たとき、体が震えました。

言葉で語りきれないことを写真は語ってくれます。写真で感じたことに言葉が意味を与えてくれます。美香さんは「言葉」を持った方だったと思います。たくさんの取材をするなかで、小さな事柄から普遍的なものをひきだす力。それをやさしい言葉で表現する力。お会いしてお話したかった、と何度も思いました。

アートディレクションは緒方修一さん。写真を読むことができるように、感じることができるように、けれど文字が読みやすいように、本の力を最大にしてくださいました。

戦争は、そこに生きる人々のすべてを奪うもの。決して始めてはならないものです。
ぜひ、ご覧いただきたいと思います。