昨日、科学読物研究会の「創ったり、調べたり、身近な『化学』を体感しよう!」に参加してきました。
講師は栗岡誠司先生。兵庫県高校教諭、教育委員会指導主事、県立高校長を経て現在は神戸常磐大学保健科学部教授で、小中高校生へのサイエンス教室で定評のある方です。サイエンスコミュニケーション協会年会ではベストプレゼン賞を受賞してらっしゃいます。
無色になったものは、家庭でよく使われるうがい薬を紅茶に近い色にうすめたもの。こんなふうに身近なものを使って次々に実験を行い、私たちに体験させてくださいました。
これは「時計反応」と言われるもので、液体の濃さと温度が決まれば変化する時間が決まるという反応だそうです。濃度と温度を変えると、時間を変えることができるので、いろいろな仕掛けができるとか。
この実験、粉塵を小麦粉や片栗粉で行う方もいらっしゃるそうですが、先生は「こげくさい」ので砂糖を選んだとか。そして、その砂糖も湿気にくく加工されたパウダーシュガー。プレゼンターとして、たくさんの実験を行い、工夫してらっしゃるすごさを感じます。炎が消えたあとの室内にはカラメルのよい匂いが漂っていました。
こんな楽しい実験であっという間に時間がすぎましたが、さいごに日本のノーベル賞受賞の多さについて言及し、「母語でサイエンスを考えられるのはすごいこと」とおっしゃられました。
そのときに見せてくださったのが宇田川榕庵の『舎密開宗(せいみかいそう)』。百年以上前の本をお持ちくださっていました。
『舎密開宗』は、1837年(天保8年)に刊行された日本最初の化学の本。イギリス人、W,ヘンリーが著した『Elements of Experimental Chemistry』のドイツ語訳をオランダ語訳したものを宇田川榕庵が訳し、自らが実験や考察を加えたものだそうです。
早稲田大学図書館のデータベースで見ることもできます。
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/bunko08/bunko08_b0027/index.html
『舎密』という言葉は、明治の始め頃は「化学」の意味で使われ、やがて「化学」という言葉が広く使われるようになるとすたれていったとか。オランダ語のchemieはヘミと読むそうで、フランス語だとシミ。日本語でなぜ「せーみ(せいみ)」となったかわかりませんが、漢字は音に合わせてあてられたもののようです。
苦手だった化学ですが、面白いことを実感したイベントでした。
これからできるだけこのようなイベントをご紹介していきますので、みなさんもぜひ、どうぞ。百聞は一見に如かず、です。
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