しぜんのひみつ写真館4
『ぜんぶわかる!アサガオ』
渡邉弘晴 著
仁田坂英二 監修
★なくなっていたアサガオの本
夏休みにアサガオを育てた記憶は多く人にあると思います。当時は、アサガオの本がいっぱいあった気がしませんか? 確かに1980年代はたくさんありましたが、だんだん減っていき、2000年をすぎてからは、書店で見ることもなくなりました。これは、自然科学の子どもの本全体に言えることですが、新しさに欠けるとみなされてしまったのでしょう。新しい本がつくられていない間に、研究はものすごく変化し、すすんでいました。
★著者のこと
著者の渡邉弘晴さんは、写真絵本『むしをたべるくさ』http://s-wonder.jp/photobook/の著者でもあります。上の写真、上段中央にある集英社カラーサイエンス『アサガオ』も渡邉さんの著書。当時は「渡邉晴夫」の名前で活躍してらっしゃいました。
渡邉さんには「ムラサキ」と呼ばれる種類(最初の章の紅色のアサガオ)と「東京古型標準」と呼ばれる種類(表紙の青いアサガオ)を中心に育て、継続して撮影していただくことをお願いしました。
生物の撮影は、だめになることも考えて何鉢も育てます。この2種類のほかにもスカーレットオハラや変化アサガオを育てていただいたので、すごい数だったと思います。また、植物の発芽や根の撮影は独特の工夫が必要です。黒土を用意して、ガラス板などをつかって芽生えや根の成長を美しく撮ってくださいました。
東京古型標準の成長も撮ってくださったので掲載したかったのですが、ページが足りず断念。ここで少し紹介します。
★監修の先生のこと
監修は九州大学の仁田坂英二先生にお願いしました。変化アサガオで有名な先生ですが、アサガオの話をぜひお聞きしたいと思ったのです。先生に監修をお願いすると「子どもの本はもうなくなっていますしね」「ぜひ、つくりたい」とおっしゃってくださいました。今の情報をきちんと入れたアサガオの本は、古本以外に入手できなくなっている状況をご存知でした。
そして、先生がアサガオの本を子どものころに見て、その種がほしくていろいろな方に手紙を書き、お願いしたというお話をうかがいました。編集者にとってはこの上なくうれしいことです。
そして私も、変化アサガオを本に入れたいとお伝えし、ポピュラーな変化アサガオの種子を分けていただきました。
★短日植物
アサガオを育てていちばん驚いたのは、アサガオのつるの出方と花芽のつけ方。つるが出てくるシステムはよくできていて、あるつるが「これ以上のびることができないな」と判断すると、べつのつるが伸びます。また、いちばん先のつるがのびているときは、脇芽はあまりできず、無駄がありません。頂芽優先とよばれる性質です。また、暗い時間が10時間以上にならないと花芽をつくるスイッチが入りません。暗さを感じた葉がスイッチを入れるということにもびっくりしました。
★変化アサガオのひみつ
この本でいちばん感じてほしいのは「アサガオの面白さ」でした。でも、変化アサガオのしくみは遺伝のしくみです。子ども向けに簡単に説明するのはむずかしい。そこで、2章は先生のアイデアで、変化のしくみを分解して紹介することにしました。ほかの本にないわかりやすい構成になったと思います。
★アサガオFacebook
アサガオの本では、帯にQRコードをつけ、ご応募いただいた方に変化アサガオの種をプレゼントさせていただきました。この試みが成功だったかどうかは、わかりません。けれども、種のプレゼントのためにFacebookでページをつくり(https://www.facebook.com/asagaotane)、ほぼ毎日更新すると、たくさんの方が読んでくださっていることがわかりました。本をつくっているときは不安で、孤独です。でも、つくった本のむこうに、読んでくださる方々、興味をもってくださる方々が見えました。そんなみなさんにこれからも、「こんなことあります!」をお届けしたいと思います。
更新はゆるやかになりますが、Facebookも続けますので、これからもよろしくお願いいたします。