身近な自然と子どもの本と

ぜんぶわかる!タンポポ

タンポポ表紙

しぜんのひみつ写真館1
『ぜんぶわかる!タンポポ』
岩間史朗 著
芝池博幸 監修

 


なぜ、タンポポ?
タンポポは長く国語の教科書にでてくる題材で、知らない人はないといってよいぐらいです。タンポポを描いた名作の絵本もいろいろあります。
IMG_5547*でも、写真絵本は少ないし、日本に昔からある在来タンポポだけで構成した本はほとんどありません。おそらく、身近なタンポポがセイヨウタンポポと呼ばれる外来タンポポになっていたためでしょう。
圧倒的に身近なタンポポが外来タンポポになっている今だからこそ、日本在来のタンポポを紹介し、深くわかるような本をつくりたいと思いました。

著者のこと
著者は、南伊豆在住の岩間史朗さん。コマーシャルの世界で活躍し、ポプラ社では『わたしのもみじ』(http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=28500020)『名もなき日々』(http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=80003410)などの著書がある方です。最初に撮ってくださったタンポポの写真を拝見したら、日本のタンポポの特徴が!

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花をつつむ総苞がくっついている在来タンポポ。小花の数は少なくほっそりしたイメージ。©Shiro Iwama

岩間さんのところには、日本在来のタンポポとセイヨウタンポポと呼ばれる外来タンポポがありました。そこで、本の核を在来タンポポと外来のタンポポに、ということは決まりましたが、その理屈を本に入れていくと、本がつまらない。タンポポを感じられないのです。
いっぽう、著者、岩間さんの写真はとても美しい。「自然がそこにある」という写真です。そこで、第1章となる最初のまとまりを写真絵本として構成。第2章で徹底的に比較する構成にしました。
岩間さんは、美しい写真だけでなく、1年のあいだ、いくつかのタンポポを定点観測してくださいました。それは、とても大変なこと。そのうえ、根をほりだしたり、切ったり。在来タンポポとセイヨウタンポポの両方の発芽も撮影してくださったのです。タンポポギャラリー(http://s-wonder.jp/gallery/dandelion2/)ではそれらの写真を少し紹介しています。

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風を待ち、綿毛が飛ぶのを待って撮ってくださった写真。美しい! ©Shiro Iwama

監修の先生のこと
監修の芝池博幸先生は、独立行政法人 農業環境技術研究所(http://www.niaes.affrc.go.jp)の先生。日本のタンポポについてたくさん見てらっしゃった方です。わたしたちは、よく外来タンポポを「セイヨウタンポポ」とよんでいますが、実は日本のタンポポとの雑種がほとんど。その雑種タンポポについて研究なさっていらした先生です。
最初にお会いしたあと、先生は岩間さんのところにあるタンポポを見に行ってくださいました。葉の手触りやはえているところの様子から「カントウタンポポといっていいでしょうね」とおっしゃり、それだけでなく、いくつかの葉の一部を研究所で調べてくださいました。岩間さんのところのタンポポ、この本の主人公のタンポポは、まちがいなく在来タンポポでした。

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総苞がばらばらした雑種タンポポ。早春の花は軸が短く、オオイヌノフグリが大きく見えます。©Shiro Iwama

在来タンポポと外来タンポポ
ふつう私たちがタンポポの花と呼んでいるところは、頭花。小さな花(小花)の集合体です。
在来タンポポは小花が少ないので、小さくかわいい感じがします。外来タンポポは、花が大きくゴージャス。総苞の反り返り方だけでなく、花の数も見分け方の一つです。
著者のスタジオで、それぞれの花をつみ、ひとつひとつならべて撮ったのが下の写真です。

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小花の数が少ない日本のタンポポ。©Shiro Iwama

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外来タンポポ。頭花が大きくはなやかです。©Shiro Iwama

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外来タンポポ。小花が多いので並べるのに苦労しました。©Shiro Iwama

顕微鏡写真
雑種タンポポのなかには、総苞があまりそりかえらないものもあり、見分けがつかないものもあります。そんなときは花粉を見る、ということを芝池先生に教えていただきました。花粉がきれいにそろっているのが在来タンポポ、花粉の形や大きさがばらばらなのが雑種を含む外来タンポポです。
この写真は、芝池先生のところで咲いた在来タンポポを宅急便で送って撮っていただいたもの。電子顕微鏡写真は、永田文男さん撮影です。顕微鏡写真が多いのも、この本の特徴です。(永田さんのページにはタンポポの種の写真もあります。http://www.technex.co.jp/tinycafe/discovery04.html

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日本のタンポポの花粉。©Fumio Nagata

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外来タンポポの花粉。形も大きさもばらばら。 ほとんど受精できない花粉です。©Fumio Nagata

葉っぱのこと
第3章「調べてみよう」のページに掲載したいろいろな葉のコレクションは、身近な雑種タンポポの葉を著者の岩間さんが写真に撮ってくださったもの。実はそれだけでなく、芝池先生が11種類に分類し、各グループから1種類ずつ選び、そこに在来タンポポの葉を加えました。たくさんのタンポポを見てこられた先生だから、そのバリエーションを子どもたちに見せたいと思われたのでしょう。1見開きと言えど、大切な情報。この本独自のページです。

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夏枯れと冬越し
在来タンポポのくらしを見ていて驚いたのが夏にいったん枯れること。夏に見るタンポポは、すべて外来タンポポだったのです。

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外来タンポポは、8月も開花し、どんどん綿毛を飛ばしていました。©Shiro Iwama

日本のタンポポは、暑い夏にはがんばりません。秋に再び芽をだし、冬にむかって成長し、早春に開花するというくらしをしています。そのため、岩間さんのところで継続して観察していたタンポポのつぼみを出版1ヶ月前まで待ちました。

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9月。小さな芽生えです。©Shiro Iwama

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3月。つぼみが見えました! ©Shiro Iwama

日本のタンポポのくらしは、たくましいというより、しなやかな感じ。日本の季節をうまく利用している気がします。私は今、在来タンポポを家で育てています。昨年は、小さな花をつけてくれたのですが、株が2つしかなく、タイミングがあわなかったので種ができませんでした。今年は株を3つにふやしたので、春が楽しみです。このようすは、「編集日記」でお伝えしていこうと思います。

本ができるまでのさまざまなことはここにはとても書ききれませんが、タンポポという植物の面白さを少しご紹介させていただきました。本にはもっともっとたくさんの情報がつまっています。どうか、手にとってご覧ください。

 

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