身近な自然と子どもの本と

ぜんぶわかる!カイコ

カイコ表紙

しぜんのひみつ写真館5
『ぜんぶわかる!カイコ』
新開 孝 著
伴野 豊 監修

 


著者のこと
著者は新開孝さん(ブログhttp://www.shinkai.info/himuka_blog/)。
今までになんどもカイコは撮影なさっていたと思います。それでも、今回、監修の先生にお会いし、お話をうかがってカイコの印象ががらっと変わったとおっしゃいました。
監修の伴野豊先生の研究室に初めてうかがったときのこと。先生は白いまゆは普通ではなく「日本人がカイコの白いまゆを好み、白いまゆをつくるカイコを育ててきた結果なんですね」とおっしゃいました。
先生の研究室で撮影したいろいろな色のまゆの写真を拝見して納得。世界にはいろいろな色のまゆがあるのです。
その写真をお借りできますか?とお聞きすると、「フレッシュなまゆだと、もっと色がきれいなんですよ。ぜひ、できたばかりのまゆで撮影してください」と。そこで、オレンジ色や黄色、ピンク色のまゆをつくるカイコを新開さんが育ててくださることになりました。何種類ものカイコを育てるのは大変なこと。それでも新開さんは見事に育て、美しい写真を撮ってくださいました。
本に掲載したものと、別の写真を紹介します。

オレンジや黄色、うす緑、ピンクのまゆ。白いまゆは、違う形が入っています。

オレンジや黄色、うす緑、ピンクのまゆ。形や大きさも少しずつ違います。©Takashi Shinkai

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黒いのは幼虫のふん。成長ごとにひとつひとつ集めて撮影。右の小さいものが幼虫の脱皮後の頭殻。著者のすごい工夫に脱帽!でした。©Takashi Shinkai

監修の先生のこと
『ぜんぶわかる!カイコ』の監修は、九州大学の伴野豊先生にお願いしました。先生は九州大学の遺伝子資源開発センターでカイコの突然変異体を体系的に整備、維持してらっしゃいます。ナショナルバイオリソースプロジェクト、カイコのページ(http://silkworm.nbrp.jp)には、さまざまなカイコの情報があります。

お蚕さま

カイコの突然変異体は、カイコと人間との長い歴史のなかで生まれたもの。さまざまな色、形があります。そして、その全てが記録され、研究に使えるように保存されています。保存と一口に言うと簡単そうですが、1年に一度、800種類の全ての系統のたまごをふ化させ、育て、卵を産ませることのくりかえし。カイコの卵は1年しか保存ができないためです。先生方はそのくりかえしのなかでカイコを研究してらっしゃるのです。
本では、その大変な作業のなかで保存されてきたかわりもののカイコたちを紹介しました。名前も面白く、歴史を感じます。

いろいろなカイコ

いろいろなまゆ
この本ではカイコだけでなく、野蚕といわれるガの幼虫のまゆもたくさん紹介しました。新開さんは『いのちのカプセル まゆ』http://s-wonder.jp/photobook/animal/でヤママユガ、ウスタビガなどのまゆと美しい羽化を紹介してくださっていますが、今回は日本最大のガ、ヨナクニサンの成虫とまゆも撮影してくださいました。
見れば見るほど、まゆは不思議です。私はクスサンのまゆの糸がこんなに強いのを知らず、また、クスサンの幼虫に糸を吐かせてとった糸がテグスだということも知りませんでした。今、新たな糸として天蚕、シンジュサンなどの飼育などもさまざまに試みられているとのこと。人間は、自然をこんなふうに利用してきたんだな、と思わされました。

まゆ紹介のページ

まゆ紹介のページ

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クスサンの糸のアップ。時間がたつと飴色の糸がかたまる。奥に見えるのは幼虫。©Takashi Shinkai

かわいいカイコ
カイコはクワの葉しか食べず、成虫は飛ぶことができません。人間が飼育しなければ野外で生きていくことはできない生物です。そのため、環境に影響を及ぼすことがなく、研究のための生物に適しているそうです。
こんなカイコのことを新開さんは「かわいい」とおっしゃっていました。逃げ出さず、クワの葉を与えるとすぐに集まってムシャムシャ食べる姿や、一心不乱にまゆをつくる姿。そして、まゆを利用するために死んでしまうさなぎ。写真からは、人とともに生きるカイコのかわいさが伝わってきます。

羽化したばかりのカイコガ。

羽化したばかりのカイコガ。©Takashi Shinkai

まゆはすごい!
クワの葉を食べて、はきだす糸はタンパク質。この性質を利用して、今はさまざまな研究が行われています。肌をきれいにしてくれるまゆ玉なども、ふつうに使われていますね。まゆの糸は、外側と内側で太さがちがいます。また、カイコの種類によって糸の太さが違うので、古い絹製品を修復するときは、糸の太さを調べ、その太さにあったカイコの糸を用いるとか。顕微鏡写真は、永田文男さん(http://www.technex.co.jp/tinycafe/)。まゆの断面はいちどに撮れないので、パーツにわけて撮影したものを組み合わせてくださいました。
P37

カイコの研究
本のさいごの「カイコ新聞」で紹介した「光るまゆ、光る糸」。蛍光色のまゆは圧巻でした。目が光るカイコについて本に掲載したものとは別の写真を、農業生物資源研究所(http://www.nias.affrc.go.jp)の許可をいただき、掲載させていただきました。プレスリリースはこちら→http://www.nias.affrc.go.jp/press/2008/20081024/
2014年には、国立科学博物館の「ヒカリ展」で光るまゆが展示されました。
また、東京のグッチ新宿店で行われた「Tranceflora – エイミの光るシルク」http://www.nias.affrc.go.jp/snapshot/2015gucci/でも光るシルクは存在感がありました。カイコのつくるシルクは、人にやさしく、さまざまな応用が研究されています。

蛾の眼GFP

©農業生物資源研究所

透明まぶし
この本で、著者の新開さんはいろいろなカイコを飼育してくださいましたが、ただ飼育するだけでなく、まゆづくりを観察できる「まぶし」づくりを考えてくださいました。格子状のまぶしをつくり、まゆをつくらせる方法はいろいろな本にありますが、これだと逃げ出してしまうカイコがいるとのこと。ところが、新開さんの考案した「透明まぶし」にカイコを入れるとほぼまちがいなくまぶしの中央でまゆをつくってくれるそうです。本では、くわしく紹介しました。ぜひまぶしをつくって、かわいいカイコのまゆづくりを観察してください。

透明まぶしのつくり方

透明まぶしのつくり方

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