身近な自然と子どもの本と

ぜんぶわかる!モンシロチョウ

モンシロ表紙

しぜんのひみつ写真館2
「ぜんぶわかる!モンシロチョウ」
新開 孝 著
蟻川謙太郎 監修

 


いままでの本にない情報を!
「モンシロチョウ」という言葉の入った本はとても多いのですが、どれも内容が似ている…と思ったことはないでしょうか? 1980年代までさかのぼって、どのような内容が中心になってきたのかを調べてみました。
IMG_5552*モンシロチョウの卵からのふ化や幼虫の成長、さなぎからの羽化はどの本にもありました。
でも、脱皮のときにからだのなかで何がおこっているのだろう、さなぎのなかで何がおこっているのだろう、チョウが飛ぶときに、はねはどのように動くのだろう、など私自身が知りたいと思ったことに答えてくれる子どもの本はありませんでした。チョウの研究には『モンシロチョウの結婚指輪』という名著もあります。その時代から、研究は進んでいないのだろうか、そんなはずはない、と思ったのです。

著者のこと
著者は新開孝さん。ブログでは身近な昆虫が毎日のように紹介されています(http://www.shinkai.info/himuka_blog/
ポプラ社でも、そのほかの出版社でも多くの著書をお持ちです。
モンシロチョウもたくさん撮ってらっしゃった新開さんには、いろいろなことをお聞きしました。
幼虫がさなぎになる前にはどれぐらいの距離を歩くのでしょう?とか、幼虫は1日でどれぐらい食べるのでしょう?とか、成長をすべて時間を追いかけることはできますか?など。

モンシロチョウ幼虫頭殻3Z5A6140

1齢幼虫から5齢幼虫まで、脱皮後の頭の殻を保存し、写真に撮ってくださいました。すごい! ©Takashi Shinkai

新開さんは、実際に幼虫を飼育しながら、1枚のキャベツの葉がどのようになっていくかなど、面白い写真を撮ってくださいました。また、デジタルカメラの記録から、写真に時刻を入れることができました。この本ではQRコードを入れて、本では掲載しきれなかった羽化の連続写真等を見ていただけるようにしましたが、これも新開さんの細かな連続写真があったからこそです。

モンシロP26-27

監修の先生のこと
監修は総合研究大学院大学の蟻川謙太郎先生です。蟻川先生は、アゲハがお尻でも光を感じることを発見したことで有名ですが、チョウの視覚についてさまざまな研究をしてらっしゃいます。(http://www3.chubu.ac.jp/documents/research_life_health/content/6141/6141_d7db16a6c91c8b63e3b7172f76231633.pdf
先生には、私がまったく知らなかったことをたくさん教えていただきました。モンシロチョウの視覚細胞の写真も掲載させていただきました。

びっくりしたのは、「幼虫の目は成虫になっても脳のなかに残る。成虫の複眼はその外側にできる」ということ。
ふつう、幼虫の目は単眼で6こある、と本には書かれています。そして、成虫の目は複眼で2こ。幼虫のときの目がどうなるのかについては書いてありません。今回、色校正を蟻川先生にお見せしたとき、先生は「幼虫の目はチョウになっても残っているんです」とおっしゃって海外の文献を調べてくださいました。そして、顕微鏡写真等を見せてくださったのです。
蟻川先生に監修をお引き受けいただけなければ、本はまったくちがっていたと思います。

幼虫の眼

幼虫の6つの単眼。どれかわかりますか? ©Takashi Shinkai

昆虫にも筋肉?!
チョウがとぶときに背にある筋肉を動かしている、ということをご存知の方は少ないのではないでしょうか。私たちは、昆虫に筋肉がある、ということを忘れがち。チョウとハチでは筋肉のつくりと、羽とのつながり方がちがうので、飛び方がちがうのです。そして、飛んでいるときの羽の動きがわかる写真を、と無理なお願いをしたにもかかわらず、きれいな写真を撮ってくださったのは著者の新開孝さん。美しい写真をご覧ください。

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©Takashi Shinkai

モンシロP33−49ルビつき_0416

新開さんは、最近増えているというオオモンシロチョウも、北海道で撮影してくださいました。オオモンシロチョウは、ヨーロッパから移入してきたチョウで、ヨーロッパではモンシロチョウというとオオモンシロチョウをさします。幼虫が集団でくらすので、作物などで大きな被害がでているようです。モンシロチョウとの見分け方、ぜひ、知って下さい。

上がモンシロチョウ、下がオオモンシロチョウ

上がモンシロチョウ、下がオオモンシロチョウ。左がオス、右がメス。©Takashi Shinkai

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はねの裏側。左がオス、右がメス。©Takashi Shinkai

紫外線とモンシロチョウ
モンシロチョウは紫外線を感じることができるので、白く見えるメスをオスが追いかけるというのはよく知られています。新開さんは、ブラックライト下でどのように見えるかという撮影をしてくださいました。
このページの監修時、蟻川先生には重要な指摘をいただきました。
下のページは編集途中のもの。チョウの下に白い線を入れ、チョウと石やビーズが別トリミングであることを示しています。先生は「これでは、なんでもできてしまう。きちんと1枚の写真であるということを示さないと、実験したことになりませんよ」とおっしゃったのです。確かに、写真の加工が自由にできる時代です。だからこそ、地味な実験を行い、写真をとってくださる著者のためにも、そこまで考えるべきだったと思いました。写真と見比べてください。

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編集中のページ。チョウが小さくならないよう、左右とも1枚の写真をトリミングしています。

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これが1枚の写真。紫外線を感じるビーズや石とチョウが一緒に写されていることが大切なこと。ただ、ビーズが大きく、チョウが小さくなってしまうので、トリミングしていたのでした。©Takashi Shinkai

顕微鏡写真
オスとメスとで紫外線を吸収するかどうかがちがう、ということは羽にひみつがあるはず、ということで顕微鏡写真を永田文男さん(http://www.technex.co.jp/tinycafe/)にお願いしました。タンポポでもお願いした方です。
写真をご覧になった蟻川先生が教えてくださったのは、オスの羽にあるビーズのような丸いものは、紫外線を吸収するものだということ。モンシロチョウにも、知られていないことはたくさんありました。

鱗粉の顕微鏡写真ページ

鱗粉の顕微鏡写真ページ

透過光の写真
新開さんがモンシロチョウの本のために撮ってくださった美しい写真はたくさんありますが、私が息をのんだ写真は自然のなかの写真だけではありません。美しいさなぎの写真を見てください。
きっと「さなぎのなかはどうなっているのでしょう」という疑問に答えようと工夫をしてくださったのだと思います。光をこんなに美しくつかったさなぎの写真、見たことがありますか?

モンシロチョウ蛹3Z5A6775

目や口、羽などが透けて見えます。宇宙人のようにも見えますが、幻想的ではありませんか。©Takashi Shinkai

本の役割
蟻川先生は本のさいごで書いてくださいました。「この本に書いてあることは、モンシロチョウの全てではありません。よくわかったことも、研究中のこともあります。そればかりか、本をつくっている間に初めて見つかったものもあります。この本を読んだら、外でモンシロチョウをつかまえて、自分の眼で観察しましょう。君に見つけてもらうのを待っている何かが、きっとあるはずです。研究はそこから始まるのです。」

すてきなメッセージです。

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