身近な自然と子どもの本と

ぜんぶわかる!メダカ

メダカ表紙

しぜんのひみつ写真館3
『ぜんぶわかる!メダカ』
内山りゅう 著
酒泉 満 監修

 


メダカの本
メダカの本はたくさんありますが、今回いちばん参考にしたのは左の『カラー自然シリーズ35 メダカ』(偕成社 1981年)でした。この本は、監修をお願いした酒泉満先生が、大学院生のころに執筆なさった本。子ども向けの本でありながら、説明が具体的でよく知っている方でないと書けない文章です。
少し長くなりますが引用します。
「冬の到来とともに、メダカの卵巣はすっかり小さくなります。そのかわり、夏のあいだに食べたえさの養分が、消化管のあいだに脂肪のかたまりとなって貯えられます。冬のあいだの栄養になるのです。」
私たち子どもの本をつくっている編集者は、もっともっと勉強しなければいけないと思った本でした。

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さまざまな方言があったり、食用にしていたり、メダカは日本人の文化と深く結びついています。

著者のこと
日本のメダカが、現在は2種類に分けられているのをご存知でしょうか。キタノメダカとミナミメダカです。この2種類のメダカについての児童書がないことから写真家の内山りゅうさんにご相談したところ「メダカは、きちんとやりたいと思っていたんだ」とおっしゃってくださいました。内山さんは、日本各地のメダカ全種類を撮影してらっしゃったのです。
内山さんは、淡水の生物や水そのもの、田んぼの生き物にこだわり、美しい写真を撮ってらっしゃる方です。ブログ(http://uchiyamaryu.com)もお持ちで、さまざまな活動や本のことを書いてらっしゃいます。ポプラ社では『ヘビのひみつ』(http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=21810140) 『たんぼのカエルのだいへんしん』(http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=21810140) 『タガメのいるたんぼ』(http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=21810220)などの著書をお持ちです。
田んぼの生き物にこだわり、和歌山で観察を続けてらっしゃる内山さんです。水をぬいてしまう田んぼがふえるなかで、記録としてもメダカのことを残しておかなければ、と思ってらっしゃったのだと思います。

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©Ryu Uchiyama

 

監修の先生のこと
監修は新潟大学の酒泉満先生にお願いしました。酒泉先生はメダカについての第一人者。キタノメダカの最初の発見者は酒泉先生ですし、その学名は Oryzias sakaizumii(オリジアス サカイズミイ)です。
酒泉先生は前述した本のあとがきで「野生のメダカが、いつごろ、どこから日本という島国にやってきたのだろうか、ということに興味をもっています。そのために日本中のメダカを探し集め、タンパク質の性質を調べて、日本のメダカがどのような遺伝的な性質を持っているのか、どのようにグループ分けができるか、ということなどを調査しています。」と書いてらっしゃいます。1981年のことです。
それから34年。酒泉先生がずっと継続して研究してらっしゃったことを、今回の企画には紹介させていただきました。それは、日本のメダカのドラマでした。

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2つのメダカ
メダカは北海道をのぞく日本全国で見られ、キタノメダカとミナミメダカの2種類がいます。キタノメダカとミナミメダカはそっくりですが、持っている遺伝子は人間とチンパンジー以上に違います。
キタノメダカは、北陸地方と東北地方の日本海側にすむメダカ。地域によって2つのグループに分けられます。
ミナミメダカは、日本の広い地域で見られるメダカ。地域によって10のグループに分けられています。
ニュース等のでご存知の方も、写真でご覧になった方は少ないのではないでしょうか。
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世界のメダカ
酒泉先生にお話をうかがい、世界にたくさんのメダカがいること、どれも熱帯アジアであること、米作地域であることを知りました。世界のメダカの写真は、先生がお持ちだったものと、先生の研究室で内山さんが撮影してくださったものがあります。突然変異したメダカからつくられたメダカも紹介していますが、これも先生の研究室で撮影させていただいたものです。

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オリジアス ウォウォラエ(ニシキメダカ)。世界のメダカの和名は、酒泉先生の命名です。©Ryu Uchiyama

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44-45メダカのからだ
メダカは、小学校の理科教科書でもおなじみの生物ですが、卵からふ化するところが学習の中心。この本では、卵のなかで何がおこっているかわかるようにくわしく説明しています。
この写真は、著者の内山さんが、野生のミナミメダカを飼育し、時間をかけて撮影してくださったもの。水のなかの透明な卵が変化するようすは、何度見ても不思議です。
16-17メダカを飼っている人でも、小さなメダカのからだがどのようになっているかは、あまり知らないと思います。メダカは小さなセキツイ動物。胸びれは人の手と腕、はらびれは足にあたります。からだのなかには、心臓も肝臓も腎臓も脾臓もあります。これらは非常にわかりやすいイラストで紹介していますが、このイラストは安富佐織さん。何匹ものメダカを解剖し、ひとつひとつ確認しながら描いてくださいました。

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詳細なイラストだけでなく、メダカの特徴がよくわかるイラストもたくさん描いてくださっています。

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メダカはからだの大きさに比べて卵が大きいことを表現したイラスト。魚がかわいい!©Saori Yasutomi

メダカは大きな目が特徴で、見る力にすぐれ、水中から外のようすを見ていますし、色もある程度見分けることができます。このような体のことをかなり徹底的に説明したり、さまざまな実験を紹介したのもこの本の特徴。内山さんは、メダカの骨格標本の面白い写真をとってくださいました。

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飛びだしているのは、目の外側のまく。標本は酒泉先生の研究室、加藤直之さんがつくってくださったもの。©Ryu Uchiyama

この写真のアイデアは、一緒に編集をしてくださった清水洋美さん。
いろいろな書籍を読み、酒泉先生にたくさんの質問をし、本をつくるために大切なことを手間を惜しまず、ていねいに進めてくれました。
酒泉先生の研究室でいただいた標本を、ライトテーブルの上で見ていて「面白い!」と思ったそうです。
『ずかん プランクトン』 『ずかん たね』(共に技術評論社刊)も清水さんの編集ですが、ご覧いただければ編集のていねいさをおわかりいただけると思います。本は、たくさんの人のアイデアでできているのです。

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©Ryu Uchiyama

絶命危惧種メダカ
メダカが「絶滅のおそれのある野生生物」に指定されたのは1999年のこと。子どものころ、田んぼの用水路や身近な小さい川でふつうに見てきた大人にとっては「日本の環境はそこまでだめになったのか」と思えるニュースでした。
実際、東京で「メダカだ!」と捕まえても、それはオイカワやモツゴの幼魚だったりします。
日本にいる野生のメダカは日本特産種。日本にしかいないもので、その遺伝子を調べるとそれぞれの水系によって特徴があります。ですから、飼育したメダカを川に逃がすのは、自然保護にはなりません。その川にいるメダカと交雑してしまい、その地域特有のメダカがもつ特徴を変えてしまいます。
日本にいるメダカの特徴をよく知って、絶滅しないようにしたいものです。

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